中医学から見た食事

中医学(ちゅういがく)から見た食事
1、中医学では人の内臓の中でも、腎は「先天の精」、脾は「後天の精」と呼ばれており、生まれ持っての体質や、後の体質に大きく関わると認識しています。この両者の働きがあって、始めて人は正常な生命活動が営まれます。そして、この脾(消化器)の相当部分に食事の問題が含まれます。当たり前のことですが、食べるということは、非常に大切なことです。間違った食生活や、無理なダイエットが脾に影響して、全身の健康状態を損なうのはいうまでもありません。
 中医学では「水穀」という言葉が協調されます。水はもちろん水分のことで、人の80パーセントは水でできていますので、できるだけ十分に水分をとる必要があります。特にお年寄りの方は、体が乾燥しがちですので、水分の補給に留意してください。
 「穀」は穀物のことを指します。穀物はもっとも多くの栄養素を含み、しかもそのバランスもよく、誰でも毎日たくさんの量を食べられる理想的な食品です。昔から現在に至るまで、穀物は「主食」といわれているように、一日のうち、半分以上は穀物が占めるようにしましょう。
2、おいしく食べること。これは意外に重要なことです。これにより消化管の働きを活発にし、精神的にもリラックスするのでストレスの解消に役立ちます。中華料理が発達したのも、このような考え方があったからです。
 食べ方にも、いろいろ工夫してみましょう。生もの、焼きもの、炒めもの、煮たもの、煮込んだものの順に消化がよくなります。生ものが一番消化に悪いのです。食べるときに軟らかいものですから、多くの人が消化がよいと錯覚してしまいます。実際には、胃や腸に入ってから沢山の熱量を消耗しますし、内臓を冷やしてしまいます。
 子供というのは、成長発育期ですから、栄養があってカロリーの低いものを沢山食べさせることが基本です。カロリーの高いもの(砂糖、チーズ、バター)を多く食べさせると、それでお腹がいっぱいになって、それで食事があまりとれなくなることがよくあります。注意しましょう。
3、最近、日本のテレビや新聞等で「薬膳」と称するものが紹介されています。しかし、これらの多くは強壮、補益に属し、昔、皇帝や大金持ちの人が食べていたもので、一般家庭の人が常に食べるようなものではありません。本来の「薬膳」とは、病人に適した食事療法のことをいいます。病人が食べるものですから当然、お粥やスープの類が多くなります。たくさんの種類がありますが、2、3一般的な例をあげますので参考にしてください。

薬膳料理

①体の虚弱な人:スッポン、鳥がら、豚の骨、生きたフナ等を調理したスープ、ウナギ、どじょう等もよいでしょう。人参、黄蓍等を加えると気力を増します。
②目を丈夫にしたい人:菊花、枸杞、レバー、魚の目等を加えるとよいでしょう。
③貧血の人:何でも色の濃いものを選んで食べましょう。例えば、レバー、牛肉、豚肉、鰯(イワシ)、鯖(サバ)、トマト、ほうれん草、海草等。
④白血病、リンパ肉腫、骨髄腫等重症な血液病:豚の骨を割って、中の骨髄が出るようにして、骨と一緒に煮込んでスープにしましょう。ネギやショウガを入れれば体が温まります。
 一般に、血液病にかかる人に偏食する傾向が見られます。日常の食習慣をもう一度検討してみましょう。


現代薬理学的にみても効果が期待できるもの

 

コレステロールを下げ、血圧を下げ、血管の硬化を防ぐ食品

海草、海苔、山ざ、キクラゲ、にんにく、はす、たまねぎ、セロリ、クラゲ、蜂蜜、牛乳、大豆、キノコ、すっぽん等。
消炎作用のある食品:にんにく、ほうれん草の根、馬歯寛、冬瓜の種、油菜、キノコ等。
血糖を下げる作用のある食品:豚の膵臓、馬の乳、山芋、えん豆、苦瓜、たまねぎ等。
清熱解毒作用のある食品:スイカ、冬瓜、キュウリ、苦瓜、烏梅、大根、たにし等。
利尿作用のある食品:スイカ、スイカの皮、冬瓜の皮、お茶、緑豆、トウモロコシのひげ、ふな、すみいか等。
胃を丈夫にする食品:しょうが、梅、鶏の砂きも、麦の芽、陳皮、サンショウ、茴香、ねぎ、にんにく、酢、山ざ等。
便通をよくする食品:ゴマ、松の実、柏子仁、バナナ、蜂蜜、桃仁等。
咳や痰に効果のある食品:ぎんなん、杏仁、冬瓜の皮、オレンジ、梨、氷砂糖、大根、動物の胆等。
止血作用のある食品:落花生の赤い皮、キクラゲ、糸瓜絡炭、烏賊骨等。
補益作用のある食品
 補脾ー飴、なつめ、落花生、はすの種、山芋等。
 補腎壮陽ー羊肉、すっぽんの肉、クルミ、なまこ、えび等。
 補血ーなつめ、くわの実、霊芝等。
 滋陰ー魚の浮き袋、すっぽん、キクラゲ等。
 補肝明目ーレバー、菊花、枸杞の実等。
止瀉作用のある食品:にんにく、馬歯寛、焦がした麦芽、焦がした山ざ、焦がした穀物の芽、炒めたみかんの皮、はと麦、はす、人参、炒めた山芋、焦がしたいかの骨等。
母乳を出す作用のある食品:フナ(黒い種類の方が良い)、豚足、魚の頭、カボチャの実等。
風邪の予防作用のある食品:しょうが、にんにく、酢、淡豆鼓等。
血を増やす食品:色の濃い肉・魚・野菜。例えば、レバー、牛肉、まぐろ、いわし、さば、ほうれん草、にんじん等。


*ご参考までに
 中国の研究では「綿実油」を男性の避妊食として推奨しています。男性の生殖機能を抑制すると論じております。(李家振等:中医男科証治。日本語訳:「男性病」の漢方治療:自然社発行)
 日本で日常使われている“サラダ油”の中に、この「綿実油」を含んでいるものが少なからず売られております。日本のある先生がメーカー側に指摘したところ、当然否定したそうです。心して注意する必要があると思います。

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