中医学
 二千年以上前に、中国で生まれた中国の伝統医学です。陰陽五行論をはじめに、哲学的な概念から、自然界と人との関係を体系的に作り上げています。これらの概念や用語は、中国では当たり前のように日常生活に取り入れられていますが、日本ではなじみがないので少し難しいかもしれません。
 しかし、人が自然界の中で生きている限り、気候など自然環境やストレスが多い現代の社会環境に影響を受けるのは当たり前のことであり、それを身体の変化と結びつけるのはごく自然なことです。中医学では、こういったことを理論的にふまえ、長年の臨床を通して、現在もさらに進歩し続けている学問です。
 人は機械と違い、壊れた部品だけ交換すれば治るものではありません。健康状態や病気を考える際も、一部分だけでなく全体を見ないと、大きな落とし穴にはまる可能性があります。気候や食事などの生活習慣、体の中にある臓腑単体だけを見るのでなく、臓腑間のつながり、さらには心との関係はとても複雑です。単純に細胞や遺伝子の問題だけ追求しても、すべての解決にはつながりません。どんなときでも全体のバランスを考えることが重要です。 

診察方法

 四診(ししん)…望・聞・問・切診といった4つの診断方法。
・望診(ぼうしん)─患者さんの顔、目、舌などを直接肉眼で観察する方法。
・聞診(ぶんしん)─声や呼吸音、口臭、排泄物の臭いなど耳と鼻による観察方法。
・問診(もんしん)─いろいろな自覚症状など、問答による診察方法。
・切診(せつしん)─脈の状態やお腹の具合を触診によって調べる方法。
経絡(けいらく)
 気血の通り道で、神経のように身体中にはりめぐらされ、五臓六腑ともつながっています。経絡上のポイントにつぼがあり、病気にあわせていくつかのツボを組み合わせて用います。
陰陽(いんよう)
 表と裏、天と地、男と女、自律神経に相互拮抗する作用がある交感神経と副交感神経があように、自然界のすべてのものを二つに分ける考え方です。人体のバランス、さらには自然界との調和などを理論的に表しています。

生薬

 500種類以上ある天然の生薬には、五味(酸、苦、甘、辛、鹹)と五性(寒、涼、熱、温、平)というように、それぞれ独特の性質があり、作用を持っています。その人の病状にあわせ天然の生薬をブレンドするので、無理なく病因を取り除くと同時に身体の抵抗力を高めることができます。